アッパーなビートのトラックとともに始まる、柔らかで意志の強さを感じさせる歌声に心をつかまれる。ライミングとフロウはしなやかでクール。透明感のあるヴォーカルで表現されるフックとの対比が心地よい。アルバム1曲目にふさわしく、未来への不安を乗り越えて前に進む静かな決意を感じさせる。
アルバムでのメジャーデビューに先駆け、8月に先行で配信リリースされた、キュートでスウィートな歌声が魅力のドリーミーなエレクトロ・ポップ。強さと弱さがにじむ静かなモノローグのようなラップが切なく響く。儚い恋の終わりに感じる痛みを、美しく韻を踏みながら物語のように描いていく歌詞も秀逸。
どことなくエキゾチックなサウンドとメロディで「Change my mind mind」とループする、一度耳にしたら忘れられない不思議な浮遊感を携えた楽曲。サウンドプロデューサーであるKREVAのクールなラップと小西のチルな歌声の掛け合わせで、まさに唯一無比なポップ・ミュージックに仕上がっている。
心臓の鼓動を思わせるビートと雨音を感じさせるサウンドが、物語の風景を鮮やかに浮かび上がらせる美しいスローバラード。歌詞にも綴られている「心臓にある心象」そのもののようなトラックと、儚げなウィスパーボイスで繰り出されるライムが、雨の中で佇む女性の心の痛みを静かに描き出していく。
ファンキーなビートが心地よく体を揺らすエレクトロ・ポップ。絶妙にエフェクトを効かせた弾けるようなヴォーカルが魅力的。すべて日本語詞で綴られていながら、繰り返して韻を踏むように歌うヴァースは極めて洋楽的に響く。軽快なヴァースの間にスローダウンするラップパートへと移行する構成も面白い。
陽性のエネルギーを感じる、ハッピーでトロピカルなエレクトロ・サウンド。このトラックに導かれるような、柔らかな小西の歌声が非常にオーガニックに響く。ラップもナチュラルなフロウがとても気持ちいい。逢いたくても逢えない切ない気持ちを胸に秘めながら、大らかに「愛」を歌う有機的なラブソング。
今作の中で唯一、ラップパートが入っていないポップ・ソング。内省的で弱気になる自分を自ら鼓舞するような歌詞が、ミニマルなエレクトロ・サウンドとクラップ音で構成されたトラックに乗って、ストレートに胸を打つ。抑揚を抑えた展開がむしろ彼女のヴォーカルを際立たせ、聴き手の感情を揺さぶる。
ピアノサウンドにのせ弾き語り的に歌いだされるスローナンバー。ボコーダーを使ったヴォーカルは切ない追憶をイメージさせ、ポエトリー・リーディングのようなラップがまっすぐ「言葉」を伝える。ライムに固執するのではなく、届けたいエモーションを優先し、それが見事に韻を踏む高い作詞能力にも注目。
取材・文=杉浦美恵