小西真奈美小西真奈美

小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】2018年10月24日 発売小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】2018年10月24日 発売

  • 小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】初回限定盤(CD+DVD)¥3,500(税込)小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】初回限定盤(CD+DVD)¥3,500(税込)
    初回限定盤(CD+DVD)
    ¥3,500(税込)
  • 小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】通常盤(CD)¥2,500(税込)小西真奈美 メジャー1stアルバム【 Here We Go 】通常盤(CD)¥2,500(税込)
    通常盤(CD)
    ¥2,500(税込)

『Here We Go』Music Video

全曲レビュー

Here We Go

アッパーなビートのトラックとともに始まる、柔らかで意志の強さを感じさせる歌声に心をつかまれる。ライミングとフロウはしなやかでクール。透明感のあるヴォーカルで表現されるフックとの対比が心地よい。アルバム1曲目にふさわしく、未来への不安を乗り越えて前に進む静かな決意を感じさせる。

最後の花火

アルバムでのメジャーデビューに先駆け、8月に先行で配信リリースされた、キュートでスウィートな歌声が魅力のドリーミーなエレクトロ・ポップ。強さと弱さがにじむ静かなモノローグのようなラップが切なく響く。儚い恋の終わりに感じる痛みを、美しく韻を踏みながら物語のように描いていく歌詞も秀逸。

Change My Mind

どことなくエキゾチックなサウンドとメロディで「Change my mind mind」とループする、一度耳にしたら忘れられない不思議な浮遊感を携えた楽曲。サウンドプロデューサーであるKREVAのクールなラップと小西のチルな歌声の掛け合わせで、まさに唯一無比なポップ・ミュージックに仕上がっている。

The Rainy Song

心臓の鼓動を思わせるビートと雨音を感じさせるサウンドが、物語の風景を鮮やかに浮かび上がらせる美しいスローバラード。歌詞にも綴られている「心臓にある心象」そのもののようなトラックと、儚げなウィスパーボイスで繰り出されるライムが、雨の中で佇む女性の心の痛みを静かに描き出していく。

振動

ファンキーなビートが心地よく体を揺らすエレクトロ・ポップ。絶妙にエフェクトを効かせた弾けるようなヴォーカルが魅力的。すべて日本語詞で綴られていながら、繰り返して韻を踏むように歌うヴァースは極めて洋楽的に響く。軽快なヴァースの間にスローダウンするラップパートへと移行する構成も面白い。

愛の体温

陽性のエネルギーを感じる、ハッピーでトロピカルなエレクトロ・サウンド。このトラックに導かれるような、柔らかな小西の歌声が非常にオーガニックに響く。ラップもナチュラルなフロウがとても気持ちいい。逢いたくても逢えない切ない気持ちを胸に秘めながら、大らかに「愛」を歌う有機的なラブソング。

The Way

今作の中で唯一、ラップパートが入っていないポップ・ソング。内省的で弱気になる自分を自ら鼓舞するような歌詞が、ミニマルなエレクトロ・サウンドとクラップ音で構成されたトラックに乗って、ストレートに胸を打つ。抑揚を抑えた展開がむしろ彼女のヴォーカルを際立たせ、聴き手の感情を揺さぶる。

またここで逢える

ピアノサウンドにのせ弾き語り的に歌いだされるスローナンバー。ボコーダーを使ったヴォーカルは切ない追憶をイメージさせ、ポエトリー・リーディングのようなラップがまっすぐ「言葉」を伝える。ライムに固執するのではなく、届けたいエモーションを優先し、それが見事に韻を踏む高い作詞能力にも注目。

『Here We Go』
オフィシャルインタビュー

音楽、ラップとの出会い

──小西さんは、音楽活動を始める前、リスナーとしてはどんな音楽を聴いていましたか?
かなり王道的なものを聴いていたと思います。すごくコアなものが好きだったわけじゃなくて、学生時代はZARDやB’zをよく聴いていたし、あとはザ・ブルーハーツがすごく好きで。洋楽でよく聴いていたのはジャネット・ジャクソンとベッド・ミドラー。TLCも好きでした。自分でラップの曲を作るようになって気付いたんですけど、「そうだ、TLCはレフト・アイがラップしてたよね」とか、実は意識してなかったけど昔からラップには馴染みがあったんですよね。あと、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやニルヴァーナ、コールドプレイとかロックも聴きますし、クラシックも聴くし、ジャンル的なこだわりはもともとないんですよ。
──2016年に『KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない 2016 SAKURA」』に出演してラップに初チャレンジしたことが、小西さんが本格的に音楽活動を開始するきっかけのひとつになっているかと思います。舞台に出演された時、ラップでの表現にどんな手応えを感じたのでしょう。
その舞台のために、ある日、出演者が歌の練習をする稽古日があったんですが、私以外の出演者の方は、ミュージカルで歌ってらっしゃる方とか、AKLOさんやMummy-D(RHYMESTER)さんといった、ラップを本業としている方ばかりでした。私の練習の順番はその日の最後で──たぶん一番迷惑をかけるから最後なんだと思ってたんですけど(笑)──順番がまわってきてドキドキしてたんです。Mummy-DさんとAKLOさんは、それぞれ練習は終わってるんですけど「聴きたい」って言って残っていらして。いやもう、すごいプレッシャーだなあと思いましたけど、私はどうせ初心者だし、できないのは当然だからいいやと開き直ってたんですね。もちろんKREVAさんも音楽監督なので立ち会っていらして、練習を終えた後、その3人のみなさんから「すごくいいよ」って、まさかのお褒めの言葉をいただいて。「ラップが上手い人はいるし、上手くなるのは練習すればできるけど、真奈美ちゃんみたいなラップの仕方は自分たちはどうやってもできないし、すごい独特だから、(ラップを)やったほうがいいし、作ったほうがいいよ」って言ってくださって。
──その言葉がラップで音楽表現をしてみようというきっかけになったんですね。
その舞台に出る前にも、まわりのスタッフの方とかに、「曲を作ってみたら?」と言われて、歌詞を書いてみたり、曲を作ったりっていうのは少しやっていたんです。もともと音楽は好きなんですけど、完全に聴く側だった私が「作ってみたら?」って言われて、でも「作るって?」ってまずそこからですよね(笑)。「ああそうか、ふと思ったことやフレーズをレコーダーに録ったり、ノートに書いたりすることはできるよね」と思って。そういうことをやり始めて、それがなんとなく面白いなと思い始めてた時期でもあったんです。そのタイミングでその舞台のお話が来て、「じゃあラップをやってみよう。そうか、韻を踏むんだよね」と思って、本腰を入れて作り始めたっていうのがきっかけですね。
──完全に独学で作詞も作曲も始めていったんですか?
どういうやり方が正しいのかもわからなかったんですけど、自分なりに作っていく中で「これってラップなのかな?」って思って、KREVAさんにデモを送って「これラップになってますか?」って聞きました(笑)。そしたら「ラップじゃん! できてるよ!」って言ってもらえて嬉しくなって、この方法でいいんだって少し自信もついて、どんどん作っていくことができたんです。
──小西さんのラップは、柔らかくてナチュラルで、確かにとてもオリジナルな魅力があります。
男性のラッパーみたいな歌い方っていうのは、私にはどうやっても無理だと思っていて。私のこの声質もありますし。それに、モノマネすることは求められていないと思っていたので、自分なりの表現でやっていこうと思いました。
──日々、作詞したり作曲したり、ラップのリリックを考えたりする時は、どんなふうにインスピレーションが降りてきますか?
私の場合、役者として演じる時もそうなんですけど、台本の流れを追ったり台詞を覚えたりっていうよりは、その台本を材料にして映像が浮かんでくるっていう感じなんですよね。その映像がまず浮かんで、それから本読みに入っていくということが多くて。ラップも曲作りも、それに近いものがありますね。ひとつ言葉やメロディが思い浮かんだら、それをもとに頭の中で映像や風景がわーっと現れてくるんです。それを音楽にしていくという感じです。
──女優として映画や舞台で、視覚的に物語を表現することを続けてきた小西さんならではの感性ですよね。
そうなんですかね。でも、子どもの頃から、本を読む時でも話を聞く時でも、なんでもすぐ映像が頭に浮かぶんですよ。みんなそうだと思ってたんですけど、小学生の頃とか、そういう話を友だちにしても「え?わかんない」みたいな反応をされることもあって、ああ、みんながそうだっていうわけじゃないんだ、って思った記憶があります。

作品制作

──これまで、映画の中の役として歌を歌うという経験はあったと思いますが、小西真奈美としての音楽活動をスタートさせるにあたって、そこにどういう思いを抱いていましたか?
役者という仕事をさせていただく上では、まず台本というものがあって、その台本の中に書かれた役を演じて、いかに作品を観てくださる方たちの心に届けてあげられるかということを考えていきますよね。監督さんはもちろん、脚本家さんや原作者さん、プロデューサーさん、そして共演者の方たちと一緒に作り上げていくものだし、小西真奈美という人間はなるべく出ないように、その作品の役を私という人間を通して表現するということに徹する仕事をずっとやってきました。自分は表現者ではあるけれど、ゼロからものを生み出しているわけではなかったし、音楽を作ったり、そういうクリエイティブなことをやっている方たちというのは、とんでもなく素晴らしいと、ずっと思っていたんですよ。ゼロから生み出せるということは、ものすごいことなんだと。でもそれを自分でやり始めて、「あれ、これ曲になってる」って、どんどんやっていくごとに新しい自分に出会える感覚があって、「もっと新しい自分に会いたい」みたいな気持ちが先行して。それがはじまりでした。じゃあ次は、まず周りのスタッフさんに作った楽曲を届けてみる。そこでもらった感想が思いのほか、すごくよいもので、「ああ、ちゃんと曲として成立してるんだ」って確認もできて。そしたら次は「もし落ち込んだりネガティブな気持ちになった人がいるなら、この曲でちょっとでも気持ちをハッピーにさせてあげられたらいいな」とか、自分の曲で切ない気持ちを共有できたり、心を揺らすことができるのであれば、いろんな人に届けたいなって──音楽活動に向き合う段階としては、そういうふうに進んでいったという感じですね。
──今回のデビューアルバム『Here We Go』の中には、小西さんのパーソナルな思いが滲んでいるような歌詞も多いのかなと思いました。実際に楽曲に落とし込んでいく時に、自分というものが色濃く表現されることに対して、ためらいはなかったですか?
なくはなかったと思うんですが、私の作詞や作曲は、やはり映像先行というところが大きくて、詞先か曲先かは楽曲によって様々です。サビの歌詞とメロディが一緒に出てくることが一番多くて、それが出てきた瞬間に、映像が頭に浮かぶんですよね。なので、そこで「その主人公の物語を書きたい」という感じになることが多いんですよ。もちろん私が書いているものだから、私が感じたこと、私が経験したことっていうのは、どこかに絶対出てるとは思うんですけど、自分が経験したことを100%言葉にしてるってことではないんですよね。特にラップだと韻を踏みたいからと、考えて出てくる言葉もあって、自分が表現したい内容に合っているならその言葉を選ぶし、韻に引っ張られて展開していく物語もあると思うんです。
──なるほど。小西さんの作る曲は、描かれている世界にリアルな肌触りがあるので、自身の思いが強く込められているように感じられるけれど、そこは物語として描かれていて、だからこそ普遍性や共感性の高いポップ・ミュージックとして感情を揺さぶるんですね。言われてみれば、今作の中でも、たとえば「The Rainy Song」なんかは、すごく映像的、物語的ですし。
これは、<雨なんかに負けない>っていう一節が浮かんだのが先だったか、映像が浮かんできたのが先だったか、ちょっと忘れてしまったんですけど、雨に打たれてる女性の絵が見えたんですよ。何か辛い、悲しい出来事があって、でも強く生きていこうとしている女性の姿が浮かんできて。あまり詳しく語ると聴いていただく方のイメージもあるからよくないかもしれないけど、彼女は仕事もちゃんとしてるしキャリアもあって、ファッションもメイクも完璧、でも、そんな人が雨に打たれて声もなく泣いている。そんな女性の姿が映像として出てきて、それを歌詞にしていって、サウンドもそのイメージを伝えながら作っていきました。
──映画の主人公のように、その人の感情に寄り添いながら歌詞を紡いでいくという感じなんですね。
そうですね。でもそれも私が生きてきて、そういうことを見たり感じたりした中で出てきたものだとも思うし、あとは、年齢を重ねていくにつれて、女性はどんどん強くならなきゃいけない、みたいなことを聞いたり思ったりするけど、もっと弱い部分もあっていいし、弱さを見せてもいいんじゃないかって。そんな時に雨がザーッと降っていたなら、泣いても涙も隠せるじゃないですか。だから雨に紛れて、今だけ弱い自分を見せる、許してねっていう──大人になって、そういう時があってもいいんじゃないかな、みたいなことを思いながら書きました。
──先行で配信リリースされた「最後の花火」も、とても映像的ですよね。そしてこれも、大人になったからこそ感じる切なさが表現されています。
この曲を作っていて最初に浮かんだ映像は、ティーンネイジャーの恋の映像なんですよ。花火大会があって、それを楽しみにしてる女の子、そういうキラキラした映像が出てきて、でもそれをティーンの主人公のまま書くのではなくて、いろんな経験をしてきた女性ならではの気持ちというか、ティーンネイジャーの気持ちにさせてもらえた恋愛だったなって、そう思うような歌にしたくて。大人になっていろんなことを諦めて、もうこの年齢だからこの色の洋服は着られない、もうこの丈のスカートは履けないって、女性は年齢にしばられてしまいがちなところがあるけど、心だけは、何かきらめくものに触れたら解放されて、10代の頃に戻れちゃう、みたいなことをラップで描きたいと思ったんです。

音楽で伝えたいこと

──作詞は言葉を綴るということに向き合う作業でもあるわけですが、小西さん自身は、本や小説や誰かの言葉に感情を揺さぶられたり、影響されたりすることも多いですか?
たとえば「この言葉が素晴らしかったので書き留めておく」みたいな習性はないんですけど、人って言葉ひとつでどうとでもなるというか、言葉ひとつで一瞬で傷つけられるし、一瞬でハッピーにもなれる。だから誰かに何かをお話する時は、その人の気持ちがなるべく明るくなる言葉を選びたいという気持ちはありますね。偉人の言葉をメモったり、そういう習慣はなかったけど、言葉に重きを置いて生きていきたいという思いは、ずっとあったと思います。
──その思いは歌詞を書く時にも大事にしていますか?
でも、作詞はまたちょっと違うんですよね。すべてがハッピーで何の問題もないっていう歌はあんまり作っていなくて、すごくハッピーな曲調と歌い方でも、どこかにちょっとした痛み──っていうと大げさですけど、ちょっとした切なさとか、あと少しが届かないみたいな部分を残したくて。それはどうしてかというと、私自身が音楽を聴きたいと切実に思う時って、すごくハッピーで何の問題もない日常よりも、ちょっと落ち込んだり、悲しかったりする時が多くて、そんな時、歌に励まされたり、同じ気持ちになって切なさを感じたり、音楽はそうやって寄り添ってくれる存在だったんですよね。そういうものに私自身が心を揺さぶられることが多いので。なので、必ずしもSO HAPPY!なものじゃなくて、少し切ない痛みや届かないもどかしさみたいなものを入れたくなっちゃうんですよね。なので、幸せな喜びも切ない思いも、両方入っている曲を作りたいなという思いが強いです。
──今作の「愛の体温」や「またここで逢える」は、まさにそういう楽曲だと思いました。でも聴き終えた後、不思議な力強さというか、ポジティブな読後感はどこかに必ずあるように感じます。
ああ、そうですね。やっぱり、聴いてただ暗い気持ちになったりするんじゃなくて、最終的にはどの楽曲も、光を放つものとして捉えてもらえたらいいなと思うので。人間っていろんな面があるじゃないですか。常にハッピーで常に万全な状態な人はいないし、生きていけば痛みや悲しみにも出会うし、その多面的なところが人間の魅力で、だから曲も多面的なところがあったほうが、より愛おしく感じられると思うんです。
──「The Way」なんかは、個人的にほんとに感情を揺さぶられました。これは女性が聴いたら、すごく背中を押してくれるし、あたたかく包んでくれるような楽曲だなと思って、ちょっと泣けてくるくらい。
おお! それは嬉しいです。初回限定盤のボーナストラックは別にして、今作の8曲の中では唯一ラップしていない楽曲なんですけど、すごく訥々とした抑揚を抑えた楽曲だから、ラップのフロウでノリを出すより、歌に思いを込めていくほうが合ってると思ったんですよね。聴いてくれた方に、より言葉が届くように。
──ラップの曲でもそう感じたんですけど、小西さんのリリックは、ラップとして機能させるためのテクニックというよりも、伝えたいメッセージがちゃんと伝わることを優先して作られていると思うんです。でもそれが、小西さんにしか出せない柔らかいフロウを生む結果にもつながっていて。
確かに、伝えたいことがちゃんと伝わるということは大事にしています。私がラップをやるときに思ったのは、ラップのスキルとかフロウが素晴らしい人は、KREVAさんはじめ、RHYMESTERさんもそうだし、いっぱいいる。だからそこを無理に目指す必要はないってことなんですよね。以前、KREVAさんの「トランキライザー」をカヴァーさせてもらった時、いろんな方に聴いていただいて、「小西さんのラップはすごく聴きやすくて、こういうラップもあるんだって思いました」とか、「これまでラップはちょっと苦手だと思っていたんですけど、これがきっかけで他の方のラップの曲も聴き始めました」って言ってくださる方がいて、それが私がラップをやり始めた理由のひとつでもあるんですよね。私の声で私が歌ったら、そのジャンルに対しての壁がなくなるっていうことがあるのであれば、自分のやり方でやってみたいって思ったのも、大きな理由だったので。だから「最後の花火」とかは、なるべく聴きやすいように、全部フレーズの後ろのほうで韻を踏んで、ラップってよくわからないなっていう人が聴いても耳に入りやすい感じにしました。歌い方も、フロウ的には少し単純かもしれないけど、こういう思いがあって、こういうことを伝えたいから、あえてわかりやすい感じにしたい、っていうふうに。
──タイトル曲の「Here We Go」にしても、すごくクールなラップに驚く人も多いと思うんですが、言葉がとてもはっきり耳に飛び込んできます。改めて、このデビューアルバムで、リスナーに届けたいのはどんなことですか?
あまり、こう聴いてほしいとか、どういう人に聴いてほしいっていう限定はないんですよね。歌詞もどう捉えてもらっても、どう解釈してもらってもよくて。一番嬉しいのは、聴いてくださった方たちが、自分の物語のように思って、自分のそばに置いてくれる作品になったらいいなあって。日常の中で、ちょっとでも心を揺らせる発信源というか、そういうものになれたらいいなあってイメージです。役者としての仕事は、私が演じた役が、観た人の心を揺さぶれたら嬉しいと思ってやっているけれど、音楽で表現されるのはやっぱり私自身なので、私という人間が、そういうものを生み出せたらいいなと思っています。

取材・文=杉浦美恵